ysheartの長い旅

観戦、観劇、鑑賞をきっかけに感傷に浸る旅の記録です。

#11 蒲田前奏曲(カマタ・プレリュード)

映画『蒲田前奏曲』(英語タイトルは、Kamata Prelude)の特別先行上映を観てきました。映画館で映画を観るのは、2月以来!コロナ禍ゆえのブランクからようやく離反できたysheartでした。〈ヒューマントラストシネマ渋谷〉は、(かつての映画館の名称は、もう忘れてしまったけど)宮下公園のある交差点の角で以前にも映画を観てきた場所です。

【売れない女優マチ子の眼差しを通して、”女”であること、”女優”であることで、女性が人格をうまく使い分けることが求められる社会への皮肉を、周囲の人々との交わりを介在しながら描いていく。】(フライヤーから)

第1に、4人の監督による《連作長編》すなわち、終始、マチ子が登場したり関連したりしていて、単なるオムニバス作品ではないところが面白いのです。こういうのは、僕が観た映画では、10年前に『海炭市叙景』というのがありましたが、あれは原作の小説があってそちらのほうが映画よりも”連作”らしかった記憶があります。

今回は、もっと自然に一人の女優とつながっています。そのことは、内容の面白さもあるけれど、分かり易い構成という意味で、117分の上映時間もあっという間に過ぎていく原因だと思います。

第2に、このフライヤーの文章から僕は、フェミニズム的、女性運動的(本編にも出てくる”MeToo”のよう)な映画だったら抵抗あるなあと、思って上映に臨みましたが、男性の都合やエゴと激しくせめぎあうというのでなく(確かに戦っているが)、もっと穏やかな日常の時間の流れの中で、女性の考え方に寄り添って、悪とか負の存在ないし空気(男性に原因がある訳ですが)がごちゃごちゃして女性たちが頑張って結果としてかき回してしまう中で自然に淘汰されていくのが、楽しくほっとさせてくれます。

 

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渋谷で先行上映。蒲田前奏曲、9月15日

 

4作とも良いです。通常、得体のしれないのが1.5作ぐらい含まれて、オムニバスないし”連作”というのは(自分が観てきた中では)今一つなのが多いですが、最後の渡辺監督の作品は、僕がここで述べたことにつながることを代弁してくれているし(笑 ああそうか作り手もそう考える人がいるんだと。今回のマチ子の設定にせよ映画の構成にせよ)、マチ子は何処だ、この監督は他の3人と同じ地平線上で平和な人間関係の上でこれ作ったのか、など一抹の不安がよぎったものの、終わってみれば、あれがちゃんと他の3篇と折り合っていると見ることは、僕はできた(笑)

・・・ので、今回は、全体としての感想を言うと、観てよかった、司会の松林うららさん(本編のプロデューサー兼、マチ子役での出演者)も言っていたように、何度か観に来ても、良いだろうな、と思える映画になりました。

 

監督・脚本 ・・・ 中川龍太郎、穐山茉由、安川有果、渡辺紘

企画・プロデューサー・出演 ・・・ 松林うらら

出演

第1番「蒲田哀歌」 松林うらら 古川琴音 須藤蓮

第2番「呑川ラプソディ」 伊藤沙莉 福田麻由子 川添野愛 和田光沙 

第3番「行き止まりの人々」 瀧内公美 吉村界人 大西信満 近藤芳正

第4番「シーカランスどこへ行く」 久次璃子

 

 

なお、今回の映画を観ようと思ったのは、福田麻由子さん目当てでした。福田さんを映画で観たのは、2009年公開の映画『ヘブンズ・ドア』以来です。当時、舞台あいさつで、福田さんは、「お母さんのように演じてほしいと言われた。お母さんのようにというのは難しかった」と話していたのを記憶しています。詳しくは、僕の旧ブログの映画レポートで。

その福田さんは、期待した通りの優しげな存在感で良かったです。対照的な攻めの気性を見せるのが、伊藤沙莉さんで、この女優さんも最近よく話題を見るので、興味がありまして(志村けんさんとの共演作がずっと印象に残っていました)、ここでも、伊藤さん演じる女性が突破口になって、福田さん演じる女性を動かす関係性がテンポがあって良かったです。

今回の舞台挨拶(上映前)での登壇は、福田さんのほか、川添さん、和田さん、瀧内さんの4名でしたが、福田さんは、「(沙莉さんとは)ドラマ『女王の教室』(2005年)で共演してから、3年後には姉妹の役で『霧の火』(2008年)というドラマで共演しました。小学校の同級生に久しぶりに会ったような(感じで)変わらずにいてくれて楽しかったです」。「(第2番「呑川ラプソディ」では、女子会ともう一人?の女性に)それぞれの選択があってフラットな作品になっているところが新しいなと思います」とおっしゃっていました。

登壇の(うららさんを含めて)5人とも色の違う衣装で、それも含めて楽しい時間でした。

25日の公開を待ちます。この映画自体は、穐山監督(上映後、ご登壇)によれば、大阪でのプレミア上映があって、今回は本公開、東京で初日を迎えて嬉しいとのお話でした。

 

また追記したいことがあれば、書くかもしれませんが、いろいろとネタバレの領域に入ってもいけないので、これにて。