オーチャードホールのレポート続きますが、今回は、渡辺貞夫さんのライヴでした。人生で初めて、ようやく会場でナベサダの生の演奏を聴くことができて感慨無量です。
SHISEIDO presents
Christmas Gift vol.28
Sadao Watanabe Orchestra
Salute to Duke Ellington
2021年12月12日(日)16時開場・17時開演
メンバー:
渡辺貞夫(アルトサックス)、小野塚晃(ピアノ)、粟谷巧(ベース)、竹村一哲(ドラム)
トランペットセクション:西村浩二、奥村晶、菅坡雅彦、岡崎好朗
サックスセクション:吉田治、近藤和彦、小池修、竹野昌邦、竹村直哉
(以上、敬称略)
渡辺さんがデビュー70周年を超えているということには驚き敬服するばかりです。御年88歳。今現役であり、まだ見るチャンスがあるということは奇跡的なこと。僕自身生きているうちに本物の演奏を見なくてどうする!と意気込んだものの残念ながら機を逃したのが、10月8日~10日のBLUE NOTE TOKYO開催の《BOP NIGHT》でした。
その時は、10日2ndStageを配信で観ました(その感想は、私のもうひとつのブログ《THE OTHER SIDE OF LIFE》で10月10日に投稿した通り)。
配信のライヴの中で、渡辺氏が次はオーチャードホールで12月に、と仰ったのを覚えておりました。それでも、予算のこと等あって結局、今日の当日券を期待して(それでだめなら今回はさっぱりと諦めようと腹を括って)やって来たところ、無事に、S席が取れて、価値のある時間を過ごすことができたのでした。
今回のツアー、”サリュート・トゥ・デューク・エリントン”は、今月12月4日(土)まつもと市民芸術館(長野県)から、5日(日)兵庫県立芸術文化センター、7日・8日のビルボードライブ大阪の4ステージ、そして、昨日11日(土)関内ホール(横浜)にて行われたので、その情報を参考にと準備しておいたおかげで、バイオグラフィーは勿論、ディスコグラフィーもほとんど知らない自分でも楽しむことができました。
以下、セットリストです。(BLUE NOTE TOKYOのBOP NIGHTのセットリストや演奏の様子も参考になりました)今回のライヴは、ビリー・ストレイホーンやデューク・エリントンの作品が中心です。
第1部
1.TOKYO DATING 【45th『TOKYO DATING』(1985.7)】
2.Things Ain't What They Used To Be(昔はよかったね)
渡辺氏は、「昔はこんなんじゃなかった、みたいなタイトルの曲」とご紹介(笑)
3.Just Squeeze Me
4.Raincheck
5.Moon Indigo
6.Day Dream
5、6とバラードが続きました。
聴いていて素人の私ではありますが、音が繊細に強弱、緩急つけて響いてくるのが本当に素晴らしく、永遠に全盛期のサックスプレーヤーではないか!と思えるくらいでした。ドラムの竹村氏のスティック捌きも小気味が良くて、すうっと耳に浸透します。
7.3:10Blues
ビリー・ストレイホーンの曲ですが、渡辺氏は”私の愛奏曲だった”と。
8.U.M.M.G(Upper Manhattan Medical Group)
同じくビリー・ストレイホーンの作曲。
―17時50分、第1部終了。20分間の休憩。―
9.FALLING LIKE A RAINDROP
デューク・エリントンの作品。”今の何て曲だっけ”と(笑)
10.Chelsea Bridge 【32nd『アイム・オールド・ファッション』(1976.5)】
ビリー・ストレイホーンの作品。渡辺氏がハンク・ジョーンズと共演したアルバムにも収録。ゆったりと奥行きのある、70年代らしい雰囲気の曲だなと感じました。
11.MENDJANI
今回の渡辺貞夫ビッグバンドのコンサートマスター・アレンジャー・音楽監督である、村田陽一さんの作品であるとご紹介。
12.Passion Flower
デューク・エリントンの作品。
13.ONE FOR JOJO 【52th『Night with Strings』(1992.12)】
《BOP NIGHT》の曲紹介の際にも仰った通り、91年に亡くなった高柳昌行さんを偲んで作曲された作品。ともにレコードを作るところまでできなかったという趣旨のお話をされていました。
14.I'M WITH YOU 【57th『GO STRAIGHT AHEAD 'N MAKE A LEFT』(1997.6)】
1995年の阪神淡路大震災があったことを機に。今回は、それだけでなく、東日本大震災、コロナ禍に際しての想いも込めているようです。
15.SOLITUDE
デューク・エリントンの作品。
16.PERDIDO
デューク・エリントンの演奏したこの作品を、18歳からベースキャンプで(松戸、厚木、・・・)演奏していたころ、酔うと殴り合いのけんかが始まった時には、この曲を演奏するともっとけんかが拡がってしまう、というお話だったと記憶しています(笑)。
17.SONHO DE NATAL(Christmas Dream) 【76th『アンコール!』(2016.12)】
18.Things Ain't What They Used To Be
今日の2曲目だったが、村田陽一さんによるアレンジで。
19.HARAMBEE
カルテットを残して、他の各セクションのみなさんは退場。その時に演奏。《BOP NIGHT》の時もこれが演奏されました。
20.I FELT YOUR PRESENCE(THE THEME OF "COME COME EVERYBODY")
そして、最後は、渡辺氏、小野塚氏による、
21.CARINHOSO
終演。
このほか、渡辺氏は、亡くなった人々のこと、その中で、先日亡くなった中村吉右衛門さんと生前親しく、それでも、中村さんがウッドベースを弾く趣味があったことを知り、音楽のことを話がしたかったということを仰っていました。
人生で縁のある人々、それは友人であったり、先輩後輩であったり、いろいろですが、親しかったのに、それ相応に知っておきたかったり、協力して何かを成し遂げたかったりするのにもかかわらず、実現できないまま、永遠の別れを迎えることは、往々にしてあることかもしれません。
僕もそろそろ、ここ数年でしょうかね、自分の人間関係の周りで、亡くなる人というのが出てきています。そういう人たちに話そうと思っても、もうかなわないのです。まして、人は互いに放っておこうものなら、ただ永遠に会えなくなるだけ。寂しくても時も物もただ風化してみな忘れられていくばかり。
音楽は、放っておけば消えるだけのものに証しを残す、有効な手立てのひとつと言えるかもしれません。
”よいお年を!”(渡辺氏)
そうだ、2021年も締めのあいさつをするべき時に入ったのですね。
2021年のうちに、ナベサダのライヴを観ることがかなってうれしかったです。
10月10日の決意を、12月12日に実現!のレポートでした(嬉)