ysheartの長い旅

観戦、観劇、鑑賞をきっかけに感傷に浸る旅の記録です。

#77 2022年の観劇レポⅢ 『冬物語』ほか

季節はや冬。加速してますね2022年。演劇レポート、パソコンの修理のため、だいぶ久しぶりになりました。今回は11月に観た2作、どちらも、ysheartのブログでは旧ブログからのエース、はるかぜちゃんの出演作品の感想、冬の始まりを告げる浅草から。

 

日曜日の浅草寺、朝は晴れていた。

 

Season3 ハルジオン 第8回公演

言葉のアリア『冬物語

 

作:ウィリアム・シェイクスピア

訳:小田島雄志

脚色・演出:佐々木雄太郎

 

会場:浅草九劇

2022年11月30日(水)~12月4日(日)

【出演】若尾桂子、有栖川姫子、春名風花、シミズアスナ本間理紗、星乃彩月、伊井ひとみ、楠田敏之、塩口量平、白倉裕二、熊野善啓、中三川雄介、室岡佑哉、宮﨑聡

【あらすじ】(フライヤーから)

シチリア王リオンティーズは、親友のボヘミア王ポリクシニーズが、妊娠している妻のハーマイオニと密通していると誤解する。激怒したリオンティーズは、ハーマイオニを牢獄へ監禁し、ハーマイオニは獄中で出産するが、リオンティーズは、出産した子供を異国の地へ島流しにする。ハーマイオニは神託によって潔白が証明されたが、時既に遅し、獄中で自害したとの報せが入り、リオンティーズは激しい後悔に苛まれる。そして16年の時が経ち…世代は移り変わる。過去が未来を紡ぎ出し、絶望から希望への道標を照らし出す、愛と希望の物語。

 

11月30日夕方、浅草九劇にて。

 

私が観た11月30日、午後11時52分ツイート。

初日、観てきました。浅草九劇久しぶり。シェイクスピアを観る前には毎回、原作を読んでから行くのですが、今回もおかげで愉しく観れました。はるかぜちゃんの王子良かったです。#言葉のアリア#冬物語

 

初日だったので、上記のようなシンプルな感想ツイートですが、要点は出せていて、天才的な集約です(笑)気がつけば浅草九劇での観劇は4~5年ぶりになっていました。が、浅草はたびたび訪れたい/訪れている場所ゆえに、演劇を目的に来られてうれしいです。そして、シェイクスピアは、数日前に図書館で借りたのを読んでおいたので、次はこの場面、その次は・・・と予測してゆけて、2時間40分(1時間15分後の途中休憩10分を含める)充実した時間が過ごせました。

 

その場合の予測も、誰にとっても、ポイントであると思われるであろう場面はともかく、さして重視していなかったくだりが、ああこういうくだりがあったなと思い出されたのも自分自身、面白いことに気がついた気持ちになりました。

そして本編ですが、ボヘミアの王ポリクシニーズが帰ろうとするのをシチリアの王リオンティーズ続いて妃のハーマイオニが引き留める場面。シェイクスピアのこういうセリフはまわりくどいんですが、ちゃーんと謙遜して相手を立て続けているんですよね。これが見事です。こういう場合に、僕ら実際のビジネスの場で、それでも今日中に帰らないといけなかったら、どういう言い方で断ればいいのかなあ、と少し考えました(笑)

 

女性の方がリオンティーズを演じたのは予想外でしたが、宝塚でも女性が男性を演じるわけだし、かえって他のキャストの良さが活かされていたのかもしれませんね。ポーリーナの気丈なイメージと神託が読まれ皆が喜ぶところは気持ちが入っていけます。ポーリーナ役の方、しゃんとしていて、きれいですね。次の幕で田舎の元気な女性に変貌しますが(笑)

 

そして、16年がたって、春名さんのフロリゼル登場。パーディタが羊飼いの娘として素朴に育ったのを表す、訛りのあるセリフが、ここちよく入ってきました(笑)あれは、東北方言ですかね、プロフィールによるとご出身は東京ですのに、それも不自然になるといかんところですが、そうならず、上手に演じてらっしゃいましたね。

 

祭りの時のオートリカスと周りとのやりとりが、本で読んだ時よりもわかりやすかったです。そして、変装したポリクシニーズが正体を明かし、その後は、二人の王が再会を果たし、ハーマイオニの彫像が本人のようによみがえる最後の場面まで、みんな、いつも自分の配役の表情を貫いていったのを、こちらは、瞬間で目線を各キャストに向けるysheartの超人的な観劇能力で見届けることができましたよ(笑)

 

シェイクスピアはあらかじめ確固たる台本があって、それをまた、現代の(けっこう役者も観客も共有している)感覚でツッコミを入れたいところなどは、みんな同様に笑うことができて、特に本作は、わかりやすく、ハッピーエンドで締めくくられ、今回の舞台でもみんなの踊りがあって、いい時にいい芝居を観たという実感が持てました。

いま、コロナや世界情勢・社会情勢のゆがんだ状態の中、冬の始まりに冬物語、落ち着いた良い演目に出会えて、感謝の気持ちで会場を後にしました。いま、私は、かなり危機的な家計の状況のもとにあるため、物販には寄りませんでしたが、よき思い出となりました。あと、春名さんの一人称がフロリゼルでそのまま聴けたのもファンとして嬉しく思いました(笑)変わらないけれど、演技・表現力は安定的に向上されている印象でした。

今日4日が千穐楽。みなさま、おつかれさまでした。

 

12月4日、千穐楽、おつかれさまでした。

 

 

ところで、はるかぜちゃんといえば、先月11月の上旬には、墨田区で、もう一つ観劇していました。パソコン故障中だったので記事は上げていませんでしたが、ここに書いておきます。

 

Voyantroupe   偏執狂短編集 終

すみだパークシアター倉

2022年10月28日~11月6日

 

侘色の章《レイプされたアイリーン・ウォーノス》

女性の連続殺人鬼、「ハイウェイ・キラー」の異名をとる”アイリーン・ウォーノス”の哀しき半生を追う。

 

11月5日午後11時11分ツイート。

アイリーンその人と向き合ってくれる家庭や社会がなく、僅かにいた味方も救いになれなかった。ハートの「Alone」が何とも複雑な余韻を残した。人生のまともな道を見出せなかった悲哀を演じたはるかぜちゃんの迫力が、#偏執狂 の恐怖や残酷のイメージをも超えたと思う。明日もがんばって。#春名風花

 

アイリーン・ウォーノスは、1989年から1991年にかけて7人の男性を殺害した罪で死刑判決を受け、2002年に執行されたそうです。

まず、最初からアイリーンの激しいセリフが始まるのですが、これが春名さんだとは初め気が付きませんでした。アイリーンは春名さんと小野瑞季さん(少女期)がお二人で演じていますが、後方の席から観たとはいえ迂闊でした←。その後、アイリーンのヒステリックな叫びのようなうったえが回想的な展開の中で続いていきます。それらが、すべて説得力のあるものとしてこちらに伝わってきたのが素晴らしかったです(ふつうは演技に無理を感じたりするものですがそうでなかったのです)。

 

ちょっとここで言いたい(笑)。

劇中使われている楽曲は、80年代、僕が最も好きだった洋楽のヒット曲がいくつかありました。チープ・トリックの「永遠の愛の炎」、ラストは、ハートの「アローン」など。華やかでエネルギッシュなアメリカのポップカルチャーに、アイリーンのテンションが表向きにせよ、ハマってしまっている。それが私を複雑な心境にさせました。

僕にとっては自分を支えて力を与えてくれていた(かもしれない)音楽が、アイリーンの心の闇を覆い隠す手段のように聞こえてきてしまうのです。

音楽ってそれを受け取る人のその時の状態や境遇でどんな意味の装いにも変わってしまう。そういうことなのだ。僕にとって良かったものは、Voyantroupeとは関係ないと思えばいいのだ(←コラッ)と思いたいですが、この違和感はこれからも背負っていくことでしょう。

 

まあ、あんまりいい曲を使ってほしくないな、正直!(←←←コラー!!!www)

 

女性の権利団体とかが面会してくる場面は、こちらも”違うんだって。そんなものは彼女は求めてないんだって”と、共鳴したくなるような場面でした。アイリーンに必要だったのは、普通の生活、普通の理解。何か不遇な人に特別な保護、ではなく。そういう叫びが受け止められる存在が、惜しいところに親友はいたのだけど。その親友がひとり、できることには限界があったのもわかるし。

 

・・それでラストに至るほどに、これがVoyantroupeの短編集シリーズだということを忘れていましたよ。

このシリーズは、過激で凄惨な、エロ・グロな、演技・描写が特徴ではあるけれど、率直に言って、本編で舞台奥のスクリーン上に、AVさながらのレイプシーンが二度出てくるのは余分に感じました。なんかね、春名さんの演技が、シリーズの雰囲気を超えてしまっていたと思えるのですが、ひょっとすると、本シリーズの到達点を、春名さんが示してくれたかもしれないのです、まさに最終章にふさわしく。

 

私たちは偏執狂を分析して、地獄の空間を泳いできた挙句、輪廻の果てに、自分たちの現実を取り戻してしまい、偏執狂の哀しさに寄り添う気持ちになっていたということかもしれません。

 

僕は、このシリーズのいくつかを、かつて観た時にも、はるかぜちゃんの演技を観ました。そのブログはすでに昨年閉鎖しましたが、その時からの流れに乗りながら、はるかぜちゃんは、素晴らしい演技を見せてくれて、社会の矛盾、それに対する我々の怒りを呼び覚ましてくれたと思います。

 

すみだパークシアター倉。11月5日。

 

最後を見届けられてよかった。

はるかぜちゃんについては、今年前半に、学校の卒業の公演のチケットをいったんゲットしながら、その後再発売で入手できず観られなかったという無念なこともありましたが、いいものをいくつか観ることができ、ぼちぼち良かったという気持ちになっています。

 

 

今日は、日曜日。

 

演劇を観るお金はないですが、もう一度、浅草に来ました。

11月30日にはできなかった、浅草寺本堂へのお参りもしまして。

 

12月最初の日曜日、青空が見えた浅草。

 

おみくじは、今年、安定の””続きです。

慎重に行け、よーく注意して進め、と;

 

2022年は、あと27日!