今週は再び暑い夏の日が続きましたが、台風が近づいている影響で、また一息つくことになりそうで、暑さの苦手な冬生まれのysheartには、有難いことです。お盆休みにも入ったことで、この時間を利用して、今年の演劇レポート第2弾を書いておこうと思います。
最初は、つい先日、8月5日(金)・7日(日)の2回ソワレを観た、新宿シアターブラッツでの舞台。目当ては、当ブログでおなじみのちなみさんと、本当にうれしい久しぶりに観られた、野田怜奈のお二人でした。この時期、日本が毎年向き合うこと、”戦争”がテーマです。
1.セピア色の乙女たち@新宿
藍星良プロデュース企画
セピア色の乙女たち
2022年8月4日~7日
新宿THEATER BRATS
8月5日午後10時54分ツイート。
【新宿シアターブラッツ、「セピア色の乙女たち」観劇(椿組)。枝ちなみさん目当てで来られて嬉しいが、野田怜奈さんをようやく久々に観に来られたのも良かった(GoJetGoGo以来)。皆様初日お疲れさま。 終戦の日、その前に広島長崎のあの日が近いこと思い出した。詳しい感想は千秋楽の後で。#セピア乙女】
8月7日午後9時18分ツイート。
【新宿シアターブラッツ、「セピア色の乙女たち」椿組の大千龝楽。渡部さん枝ちなみさんの前説のかなり即興的な空気感(笑)、今の私たちが漠然と抱える不安と重なる世界、誠実な演劇、よい時間過ごせた。配信とオンライン物販予定嬉しい。全力の公演、椿組桜組皆さまおつかれさまでした。#セピア乙女】
不思議なことに、前回、シアターブラッツに来た時も、かなり空腹に近い状態でして、それが今回も何とも感じなかったのでした。さすがに、水分補給のためにペットボトルは持ち込みましたが。
この会場は決して道を間違えません。歩道橋があって向かいのヨドバシカメラ社屋は、かつての厚生年金会館!スーパーバンド、エイジアの再結成来日公演(2007年)を見届けた会場でしたから。そしてこの小劇場も何度か来ています。
ツイートした通り、今回、椿組のほうだけ2回観劇でしたが、桜組のほうの意気込みも私のツイートへのいいね等を通して伝わってきました。
会場内は座席のディスタンスがとられ、前説では、ぱーるさん&野田さん、渡部晃乃さん&枝さんがサーキュレーターで換気をしっかり行っていることをアピールされていました。そして、劇中の最後のほうで、劇中劇の後のシーン、真理緒さんと藍星良さんの会話で、見送りと面会がないことを惜しむくだりを聴き、ああ、現実にもそういうことだなと察しまして。それは少し寂しいですが、むしろそれだけ徹底してくれていることに爽快さを覚えました。規制退場で、爽やかな気持ちで新宿の夕暮れの街に消えていくysheartでした(笑)
演劇の内容ですが、まず、開演前の音楽(会場BGM)が、5日は「ふるさと」、7日は「荒城の月」のいずれもジャズヴァージョンが流れていて粋な感じに浸れました。
池袋駅東口での、戦後まもなく生まれた女性の回想と語りから始まります。この女性=千里(長谷瞳さん演ずる)が母親として、娘=里花(真理緒さん演ずる)の舞台―戦争をテーマにした演劇―を見守る、という現在の世界線が、戦争(太平洋戦争)中の、千里の母(ぱーるさん演ずる)の戦争体験を支えるという構図になっています。
僕は、この構図から、令和4年の現在、戦争を伝えていくことが次第に難しくなってきていることを感ぜずにはいられませんでした。
僕は80年代に小学生(少年ハート)でしたが、当時は、戦争体験を直接聞かせるお年寄りがまわりに多くいらっしゃいました。その子供たちは、すなわち僕らの親たちであり、戦争直後の復興期を知っており、何よりその親たち(お年寄り)から十分に話を聞かされていたので、僕等は戦争の知識や記憶と、自然に共存できたのです。
ところが、時代は進んで、終戦から77年。直接に知るお年寄りから直接に話を聞く機会は今どのくらいあるのでしょう。劇中の里花は、たぶん僕に子供がいれば、その世代になりそうです。さらに今の小学生には、図書室で中沢啓治さんの漫画作品『はだしのゲン』を手に取る環境があるでしょうか(僕は当時、怖くて気持ちが悪くて、何ページも飛ばして立ち読みした記憶があるだけですが)。
かといって、表現がつよく規制される令和の現在(何でも問題視され未成年がつよく保護され学校教育への信頼が薄れたように見える現在)、できることを可能な範囲で伝えていくほかありません。
今回の劇は、戦争の映像や、登場人物の死など具体的な別離で衝撃を受ける話にはならず、ニュートラルな地平に立って、”当たり前が当たり前じゃなくなる”時に、それまでの自分が重ねてきた頑張りはどんな意味があると言えるのか、一見平穏で変わらない調子の台詞や激しい起伏に寄らない動作・表情で、せいいっぱい伝えようとしているように見えます。
この劇の意義は、戦争を伝える平和で当たり前であることの大切さを、今や伝えられるかどうかの端境期、岐路に立っている、試みの時期にあることを、示そうとした点にある、僕は今のところ、そのように捉えたことにしておきます。
空腹だったせいでしょうか、ねぎを炒めたとか、梅干しとか、そういうのでいいから食べたいなと無性に思いまして、6日の夜には、冷蔵庫に梅干しのパックが入っていました(笑)
そうだ、6日と言えば、広島原爆の日。8時15分に黙祷しました。9日の11時2分に長崎に黙祷していたのも例年のことでしたが、今年は実は仕事が忙しい時間中で、できませんでした。終戦の日(15日)の正午には黙祷したいと思います。
面会、今年の演劇会場では、お一人も果たせておりません。やむをえませんが、野田さんにも、また、今回ツイートにいいねやリプを丁寧に下さった役者さんにはいつか直にそういう場でご挨拶差し上げたいものです。野田さんも含めて。ちなみさんは、昨年、Zoomがあったし、赤坂方面での舞台後に面会できているので、次もすぐにそういう機会が来るだろうと勝手に楽観しておりますが(笑)、いえ、一回一回の機会を当たり前と思わずに待ちたいと思っています。
現在、アーカイヴ配信中、オンライン物販中、15日(終戦の日)までです。
セピア乙女については、以上ですが、
前回演劇レポの後、5月以降に観た演劇について追記しておきます。まずは、池袋のお気に入りの劇場で、5月に観た群像劇から。
2.雫のバッキャロー!!@池袋
AskプロデュースVol.27 バッキャローシリーズ第7・8弾[後編]
雫のバッキャロー!!
~山梨と山形で、ワインに人生を賭けた家族たちの物語~
2022年5月11日(水)~17日(火)
シアターグリーン BIG TREE THEATER
脚本・演出 菅野臣太朗
5月11日午後11時37分ツイート。
【池袋のBIG TREE THEATERで「#雫のバッキャロー!!」初日を観劇。前2作は未見なので予習。家族の不幸を暗く沈まず明るく乗り越えるとは印象的。群像劇は好きなんです。最後の場面はつられて一緒に拍手しそうだった。戸村桜の動き回る様子が自然で面白かった。ところでワインが飲みたい笑 #森崎りな】
山梨で白ワインを作る家族。長男の命が奪われる一年前の話。
山形で赤ワインを作る家族。長女の意識が奪われた半年後の話。
2020年秋に上演された「丘のバッキャロー!!」と、
2021年秋に上演された「土のバッキャロー!!」の
合作完結編。
(以上、フライヤーから抜粋)
家族たちとワイナリーで働く人々の当たり前のような温かい交流の中に、
人の死とはいつなのか、という問いが、むしろ観客に投げかけられているのですが、
ツイートした通り、死が暗く語られているようには見えない。そこがこの劇の少し特別な趣を感じさせるところです。それでも、われわれは、今もそうですが、どんな衝撃的なできごとが自分の周りや世間で起きようとも、今までと変わらない世界線を生きており、途切れずに進行しているのです。これを、”途切れた。時間が止まってしまった”とするのは、そう思う人の中で生まれる世界であり、主観的なものであって、およそ、乗り越えていく、という姿勢こそが、それまでの日常を断絶せずに、前に進んでいくことを可能にするのだ。そう訴えてくれているような作品でした。
目当ては、戸村桜役の森崎りなさんでした。元気に演じていらっしゃいました。
3.バロック@下北沢
演劇ユニット鵺的第15回公演
バロック【再演】
ザ・スズナリ(下北沢)
2022年6月9日(木)~19日(日)
6月15日午後11時41分ツイート。
【スズナリ、#鵺的 『バロック』15日19時の部。平日の仕事帰りだったが、21時まで全然眠気が来ず!完全にその世界を堪能できた。窓から陽の薄い光が差してほの暗い舞台美術も、家族の血にかかわるテーマも、音響やユーモアと相まって心にズシンと力強く響いて見ごたえがあった。#春名風花#バロック】
これを観られたことは、ふたつの意味で、うれしかったです。
ひとつは、スズナリで観られるということ。下北沢の演劇は、本多劇場をはじめ、いくつもの会場で観てきましたが、最も代表的な劇場がザ・スズナリ。思い出すと、ここではまだ観劇を体験したことがなかった気がするのです。
仕事帰りに下北沢のこの場所、それだけでも僕的には贅沢なのです(鵺的にもそうかもですが←)。
もうひとつは、このところ、なかなか観劇できなかった、はるかぜちゃんの出演する演劇をようやく観られたことです。
はるかぜちゃんが、学校を卒業する際の卒業公演を春に観ることがかなわず、残念でしたが、今回ようやくかないました。余談ですが、先月末には、『シン・タイタス』がまたも公演中止となり、僕自身も、同じ時期にたまたま、陽性が出て療養していたこともあり、コロナ禍の舞台の実現、上手なチケット入手は、いばらの道だなあと感じています。
呪われたような宿命を背負った御厨家。その洋館を手放そうとするときに怖ろしい出来事が起こる。その結末は、春名さん演じる、御厨はるかがそのカギを握っていた。
僕は、生きてほしかったのですけれどね。はっきりしたかたちで、死が描かれずに幕を閉じたのですが。
家族の愛や互いへの思いやりを、近親の歪んだ愛憎と情念を通して描いたダークファンタジー的な世界。僕は案外好きな分野です・・。自分の凡庸な家族で想像もしたくないですが(笑)、心のどこかに、自分の近親では絶対に居合わせないような境遇に魅力を覚える部分があるのかな。
はるかぜちゃんは、秋にも、あの!猟奇的なのを演じられる予定のようですが、どうも魅かれるんですよね、人間的な恐さの世界に。
余談ですが、大学に入って独り暮らしを開始して孤独だった当初、気持ちを紛らわそうと江戸川乱歩の作品ばかり読んでいたことがある僕ですから。小学5年生の荒れた時期には、ポプラ社の乱歩シリーズを読み漁っておりましたし。
ともかく、春名さん応援しています(・▽・)/
4.あの日、あの時。@江古田
演劇ユニットACTI☆N!カフェ劇Vol.1
あの日、あの時。
カフェ「兎亭」
19時開演
そして、今回の演劇レポート最後は、森崎りなさん声だけの出演を観に、江古田へ。
7月10日午後10時59分ツイート。
【演劇ユニットACTI☆N!カフェ劇Vol.1「あの日、あの時。」、ソワレ(19時開演)観劇。 1時間よい時間が過ごせた。 生ける者と死に行く者どちらにも葛藤があり、ここには描かれないけど6年間きっとなぎさも喪失感を乗り越えようとしてたのだろうな。 最後の手紙の声に、表れていたと思う。#森崎りな】
この閑静な住宅地に演劇をおこなう場所があるとは。
開場時間になって入っていくと、ここはカフェであって、ドリンクを買って飲みながら観劇できるようになっています。座席があって、前方が演ずるスペースになっていました。
短い時間でしたが、思わぬ結末まで楽しめました。ツイートの通りですが、この作品もまた、生と死の境界で悩み苦しむことを乗り越えることが柱になっているようです。
僕の現在の生活は、東京に、ひとりで過ごす時間がいちばん多いのですが、
このままどのように、生きることから離れていくのだろう。
死へどのように向かっていくのだろう。
最近は、
コロナ禍の影響も少なからずあるとは思いますが、
そういうことを、考えない瞬間はないような気がします。
残された生の時間をどう費やすか。
そうだ、みんな覚えていてくれるのかな。
誰も何とも思わず、僕はブログとかこうやって書いて何だか抗っているようで、
それだけで、その抵抗も空しく、何も感じない人たちを、死の世界から眺めるだけで過ぎていくのだろうか。
いま自分は絶対に生きているぞと思っていても、実は死んでいるのだとしたら、
ブログを書いている自分がいると思い込んでいるだけだとしたら。
自分は、どこで、死んだのだろう。
あるいは、いつ再生するのだろう。
・・・
・・・
アディオス!( ̄▽ ̄)/